スマブラの世界に転生したら乱闘強そうなぶりっ子の話

自分の職場に超ぶりっ子がいる。

のんびりした話し方もしぐさも見た目も女の子らしくて背丈も小さいので可愛らしい く、皆で仲良く平和にがモットーのおしゃべり好き。しかしよくよく話すと案外他人への愚痴が多くて、あれが嫌だこれは変だという文句を四六時中聞かされる。人の言うことを良くも悪くも素直に捉えるため、周りからの評価は「いい子」。

自分は長い間このぶりっ子に悩まされてきた。延々と愚痴を聞かされるのと、我欲が強くて気分次第で会社の目をすり抜けて怒られないギリギリで業務をサボろうとすること、いざ指摘するとあの手この手で他人の脆弱性を突いて「自分は悪くない」と主張してくること。

自分は割と性格がきついため、この子にビシビシとそれは間違ってる、おかしい、何が言いたいのかと言うことを主張してきたが、上記のように自分は悪くないと言うことをあの手この手で証明してくるため結局口論のようになってしまい、最後は私が彼女を虐めたような雰囲気で終わることがいつもだった。私はこの状態に非常に悩んだ。おかしいことかもしれないが、時には帰りの電車で涙が止まらなくなることがあるくらい深刻に悩んだ。


そんなある時たまたま対戦ゲームの実況にハマった。私は対戦ゲームが好きだ。ただ、プレイングは超がつくほどド下手のため、よく他人の実況動画を見ることが多い。対戦ゲームの実況動画は面白い。相手の動きを観察しながら次を予測し戦略を立て、実行に移すプロセスを解説してくれる。特に最近面白かったのはスマブラの大乱闘だ。私はこのゲームが特に下手で、買って数日でリタイアしたのだが、ある動画でコツを「ヘイト管理だ」と言っていたのが非常に興味深かった。4人で対戦する時、ただ他人を攻撃するだけでは簡単に生き残れない。誰かひとりを攻撃すればその人からのヘイトを買い、あっという間にバースト。コツは全員を均等に攻撃したり、誰かを攻撃しないことで「自分は無害だ」と主張し協力して残りの人間を攻撃すること、また自分だけひっそりと場から遠ざかって火の粉を被らないようにすること。ある時見ていて気づいた。ああ、この乱闘で真っ先に死ぬのが自分で、最後まで生き残るのがあのぶりっ子だと。

人間関係はスマブラ乱闘だ。無闇矢鱈に他人を攻撃してヘイトを買えば真っ先に批判を食らって社会から弾き出される。乱闘の世で生き残るには、争いの中心から遠ざかるか、誰かを味方につけるしかない。誰かひとりになるまで戦うことは流石にないと思うけど、いざという時には味方も裏切って画面外に弾き出さないといけないのかも。

長い間私は心の中で自分だけが悪いのか?相手は悪くないのか?と頭を悩ませてきたけど、乱闘の極意を知ってからは「自分は立ち回りがド下手なんだな」と思うようになった。私は対戦ゲームが苦手だけど、対戦ゲームのスキルの殆どはプレイヤースキルもだが、立ち回りの上手さに依存すると思う。私はゲームだけでなく人生もド下手だったのだと思う。


ぶりっ子と私の説明を書いているとなろう小説の悪役令嬢転生のあらすじのようだ。そういった物語の最後はぶりっ子の嘘が明らかになって悪役令嬢の方は本当は正しかったと周りから認められるけど、この場合の現実は違う。同僚のぶりっ子は国を崩壊させるような悪行を働いていなければ、私は国を救うほどの善行を積んでいる訳でもない。また、どんなに正しい発言も上手く使わなければただの攻撃になる。


つい先日職場の先輩から「あなたは時々正論という名のロンギヌスの槍で人を刺す癖がある」と指摘された。令和からはその槍を納めて使い所を考えていきたい。